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【論述問題の解き方】ここでは論述問題の解き方について、練習時と本番時に分けて説明する。 まず、練習時についてである。論述問題はその形式によらず、 最初にフォーマット、ないしメモを作成するのがセオリーである。一見して書くことが 思い浮かぶような小論述であっても、必要となる用語を最初に列挙しておくべきである。 なぜなら、その用語の数と問題の文字数制限によって、書く内容がある程度定まる からである。それはともかく、論述問題の練習に際してまずやるべきことは、 高校教科書を参照した論点の整理である。もちろん、現時点の知識量で書ける範囲 のことを独力で書き、後から教科書を見ながら解答を修正するという方法でも良いが、 この方法には、赤ペンで追加した論点と自分の答案やメモ書きが一カ所に集まるため、 知識を体系的に整理するのに向かないというデメリットがある。そのため、管理人 個人の意見としては、前者の方法を推奨する。論点はノート1ページに収まる程度 書き出せば十分である。この過程で、論述に使える表現のストックを増やしていく と良い。また、参照するべき対象はあくまで高校教科書であって、予備校のテキスト や市販の参考書では無い。これらは確かに網羅性や体系性では高校教科書を上回る が、実際の入試問題作成にあたって参照されるのは参考書ではなく、高校教科書 である。(最も、一部の大学の入試問題には本当に教科書を参照しているのか疑わ しいようなものもあるが)加えて、参考書類には執筆者独自の歴史観や表現のクセ が反映されがちであり、それらが受験生にとって必ずしも模範になるとは限らない。 高校教科書の比較でも述べたように、教科書には それぞれ個性があり、執筆陣の研究分野に応じて他の教科書には無い深い記述がある ことも多い。従って、できるだけ複数の教科書を併用するのが望ましい。 論点を書き出したら、そのまま答案作成に移っても良いが、不慣れなうちは本番同様 のフォーマットを作成すると良い。これについては後で詳しく述べる。 さて、実際に論点を文章化し、解答を作成してみれば分かると思うが、仮に教科書 を参照したとしても正しい答案が書けるとは限らない。これは書く訓練、即ち アウトプットの経験が不足しているからである。(模範解答自体が欠陥を含んでいる 可能性も否定できないが)ではどうすれば良いのかというと、こればっかりは とにかく書くしかない。東大世界史の傾向と対策で 触れたような論述の型に応じて、正確に論点をまとめ直す必要がある。 ただし400字を超えるような問題については文章化にかなり手間がかかるので、 論点を書き出すだけで作業を終えてしまうのもひとつの手である。 次に、本番時についてである。本番時には練習時のように文単位で 論点を書き出している時間は無いので、簡易的なメモ書きを作成することになる。 一般的には、横軸を地域、縦軸を時間とするチャートを作成し、指定語句があれば まずそこに書き込み、さらに指定語句から関連語句を想起して書き込んでいくという スタイルがとられることが多い。管理人も最初はこの方法で取り組むことを勧める。 ただし、この方法は指定語句に縛られ、問題要求からずれた答案を作成することに 繋がるという危険性を孕んでいるため、慣れてきたら、以下のような方法をとる ことを勧める。 まず、大抵の論述問題には主題と副題があり、それぞれに東大世界史の傾向と対策で 述べたような型がある。ここでは、主題が変化型、副題が比較型だったとする。 まずは、フォーマット作成にあたって区分けの基準となる変化の対象を確認する。 大抵の場合、政治変化ないし社会変化であるが、ここでは政治変化とする。この場合、 「政治」という単位をこれ以上細分化する必要は無く、その範囲で思いつくことを列挙 していけば良い。逆に、社会変化の場合は「社会」という単位を「経済」「文化」 などの細かい単位に分けると整理しやすい。必要に応じて「経済」を「農業」「商業」 「文化」を「宗教」「民族」などさらに細かく分けても良いが、細分化しすぎると かえってフォーマットの縛りがきつくなり過ぎて書きたいことが書けなくなってしまう 可能性があるので、問題要求を確認しつつ、慎重に分けていくべきである。 ちなみに、どこまでが「社会」に含まれるのかに定説は無いが、「政治」を除いた 残り全てと考えておくのが無難である。 それはともかく、ここでは変化型の問題であるから、まず変化前、変化後の事象を 書き出しそれらを矢印で結ぶという作業から始めると良い。その際、対象となる年代、 地域を確認し、大ざっぱでいいので年代順、地域別になるように整理しておくと良い。 これは、副題が比較型の問題であることを考慮したうえでのことである。 さて、ある程度変化にあたる要素が書き出せたら、次に時間との兼ね合いで副題に手を つけるか否か判断する。もし時間が厳しければそのまま書き出しても良い。比較要素 を殊更に明示しなくても、副題で比較が要求されている以上、変化の要素を書き出した 時点で何らかの対比的な項目が浮かび上がっているはずだからである。 時間があれば副題に取りかかる。比較は同一項目で行うのが原則であるから、 例えば変化そのものを比較するなら、「為政者の交代」「政体の変遷」などの視点から 書き出した要素を比較し(比較するべき対象は必ず問題文に明示されている)、 共通点、相違点があれば分かるように印をつけておく(=でも←→でも何でも良い) この作業を繰り返していけばフォーマットは完成である。 最後に指定語句がある場合はこれを確認し、追記しておく。(使い方が分からなければ 文章が破綻しないところに適当に放り込んでおく) 基本的な取り組み方は問題の型が変わっても同じである。簡潔に言えばこの方法は、 指定語句から要素を書き出すのではなく、問題の型から要素を書き出すことで、 より問題要求にコミットした答案を作成しようとする方法である。 もちろん、これでは記述できる要素が限定され、必要字数を満たせない可能性がある というデメリットもある。しかし、それでも構わないのである。字数に下限がある 場合は話が別だが、大抵の入試問題は字数の上限の八割も満たせれば十分である。 字数一杯に問題要求から外れた用語を詰め込んだ答案と、八割でも的確な論点を 拾ってある答案のどちらが評価されるかは明白である。そもそも、わざわざ論述問題 を設けているのだから、個々の単語にいちいち加点ポイントを設定しているとは 思えない。 話がそれたが、最後にメモを文章化するステップに進む。まず注意しておきたいのが、 あまりカッコをつけ過ぎないということである。一部の模範解答には学術書めいた 高尚な表現や、本質を突こうとした回りくどい言い回し、必要の無い序文や結論文が 含まれている場合があるが、これらは全て不要である。文章はなるべく簡潔かつ具体的 に記述するのが鉄則である。問題文で抽象化されている論点を具体化できているかどうか が採点基準に含まれていることは疑いない。問題文に書かれていることや前提とされて いることを反復しても無駄であり、恐らく加点対象にはならない。ただし、具体化する こととなるべく多くの歴史用語を盛り込むことは別であるから注意しなければならない。 ここで簡潔な表現について補足しておく。一部には体言止めを忌避する向きがあるが、 管理人個人の意見としては、必要に応じて体言止めを使用するのは一向に構わない と考える。もちろん、全ての文章を体言止めにするのはやりすぎだが、先述したように これはあくまで論述問題の解答であって、論文を書くわけでは無いのだから、日本語の 美しさや1文としての機能性を過度に意識する必要は無いのである。 いずれにせよ、文章化の作業は日頃の訓練がモノをいうところであるから、日々 練習をつんでおくことが重要である。 |